有機農産物と貿易

健康・スクラップブック

 有機農産物を定期的に利用する人は、「安全な食品」への関心が高い欧米諸国でも数%に過ぎません。
 ただ、「西欧諸国の有機農業」(農山漁村文化協会)という著書(1994)によると、潜在的な購買者(できることならオーガニック食品を利用したい)は、10〜20%あるだろうと言われています。日本でも、事情は同じでしょう(有機農産物の需要など詳しいデータは社団法人 食品需給研究センターが作成しています(9.24追加))。
 FDA の Delivering safe food to consumersでは、「食品会社は、オーガニック市場が政府が試算するより、よほど大きな規模に膨れ上がる」と見ています。アメリカでは、現段階でもこの市場が、売り上げベースで20%の成長をしているとされます。

 ただ、日本の場合は、有機農産物の市場が未だに混乱状態にあり、「信頼性のあるもの」をどこで買ったら良いのか分からないので、「利用したいのだけれど、できていない」という人も多いと思います。
 仕方がないので(?)、産直や共同購入に頼っている状態です。仕方がないというのは、正しい?有機農産物を手に入れられる人は、誤解を覚悟して言うなら、ごく限られた階層であり、「やむにやまれぬ事情があるか、家計に余裕がある」家庭、と思われるからです。

 日本は、食べ物へかけるお金が、欧米に比べて多いです。前出のFDAの「Delivering safe food to consumers」には、給料に占める食費の割合は、

 日本人がずば抜けて贅沢をしている?とも思えないので、日本の市場は、食料品が2倍も高いということでしょう。
 それで、例えば有機野菜が、これに加えて1割とか2割高であるので、正しい「有機農産物」が手に入るとしても、買うときにためらいを感じるかもしれません。

 ところで、ここでいう「安全な食品」は二つの内容があります。

  1. アレルギーやがんなど病気にかかりにくい食品(safety food)
  2. 生産システムが環境に負担とならない食品(security food)
 1.は、農業を経営されていて、身近な人が農薬中毒に罹ったことがあったり、都会の人が子どもがアレルギーなので、やむに止まれず求める。また、国際がん研究機関は、「1989年49種類の農薬を調査した結果、うち19は、動物に対し発癌性が認められた(人に対しては確証が得られなかった)」と指摘した、などが強いインパクトを与えました

 2.は、農薬が多投されるので、ある種類の動物が絶滅したり、薬に強い変な虫が生まれています。

 アメリカや欧州がオーガニックと言っているものは、「有機農産物」と「転換期間中有機農産物」の二つです。しかし、日本では、「有機農産物」、「減農薬栽培農産物」、「無農薬栽培農産物」、「特別栽培農産物」、「無化学肥料農産物」、「減化学肥料栽培農産物」と、いろいろに言います。その定義や内容は、ここでは書きませんが、微妙な表現であり、どうとでも解釈できるものです。

 例えば、東京中野の八百屋を観察すると、「有機・減農薬」と併記された段ボール箱が積まれています。
 変だなと思い、東京都のホームページを調べてみると、『有機農産物及び特別栽培農産物は、「東京都有機農産物及び特別栽培農産物流通指針」で定めた化学合成農薬、化学肥料ともに5割以上削減して栽培した野菜、果実、茶、米、麦、雑穀等です。』と定義されており、「有機」も「減農薬」も同じように扱って良いのでした。

 消費者が持っている「無農薬」や「有機」のイメージと、国(農水省)のガイドラインと、地方公共団体が定義しているガイドラインは、それぞれに大きなギャップを持ったままです。

 それで、アメリカやカナダ、そして中国も、「日本は何をしているのか?」といい、国際的に通用する基準に従わないなら「安心して貿易できない」とクレームを付けています。
 今後「有機農産物」の貿易が増えることが予想され、貿易上のトラブル発生の可能性があり、WTOやCODEXが「有機農産物」の国際的な基準作りと、そのラベリングの問題を検討しています。
 例えば、WTOの「WTO COMMITTEE ON TRADE AND THE ENVIRONMENT INVITES MEA SECRETARIATS, TO INFORMATION SESSION, AND DISCUSSES ITEMS RELATED TO THE LINKAGES BETWEEN THE MULTILATERAL ENVIRONMENT AND TRADE AGENDASWTO」では

 ので、WTOに参加する国々は、MEA(multilateral environmental agreements)にのっとって、貿易の取り決めをしなければならないようです。

 
日本の主な食物自給率(試算)(1995)
食物名穀物小麦粗粒穀物いも類・でんぷん砂糖類大豆野菜類肉類油脂類
単位%307187355855715
資料:農林水産省「食料需給表」

 日本は、穀類や野菜など農産物は、40%の自給率しかありません。大まかに言うと穀類の多くをアメリカやカナダから輸入し、中国から野菜の足りない分(85%の自給率1995)の30%以上を輸入しています。
 その中国は、アメリカの有機農産物認証機関・OCIAの認証基準を参考にして、95年に「オーガニック生産法」を実施しました。

 日本の潜在的な有機農産物のニーズに注目して、アメリカやカナダや中国が、すでに動き始めているようです。


参考資料:
西欧諸国の有機農業 カトリーム・ド・シルギュイ著(農山漁村文化協会)

関連URL:
Trade and Environment Bulletin WTO(世界貿易機関)
ORGANIC FDA(米国食品医薬品局)
『有機栽培・こだわり・リンク集』 健康新聞社
有機農産物の定義 
東京都・有機農産物情報
社団法人 食品需給研究センター

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