消費者は何を選ぶ?
1998年の「薬事ハンドブック」は、薬の売れ筋の微妙な変化についてリポートしています。274ページに書いてあるのは、「患者の主訴を解消しない薬効群、自覚症状の改善しない薬剤、患者を説得しにくく、その効果を数値で示せない薬効群、現状でもシェアの下位の薬効群はすでに売り上げが低下している」ということです。
平成9年秋の「健康保険法改正」により、薬剤費がいわば二重取りされ、負担が重くなるばかりの老齢者の行動は、はっきりと変化しました。医者へ行く回数が減り、薬を飲む回数が減りました。詳しいデータは、厚生省の「MEDIAS−最近の医療費の動向」で確かめることができます。この統計によると、平成10年度に入っても、病院外(外来)の診療費は、依然として対前年同期比マイナスのまま推移しています。
推測に過ぎませんが、高齢者は平均で預貯金が「有業者世帯で約2700万円、無職世帯で約2200万円」(資料:家計調査)あるので、財政の苦しい経済システムは、その金庫や財布の中味を拝借しようとしたのではなかったか。
このたとえが正しいかどうかはともかく、高齢者の反発は凄まじいもので、改正による薬剤負担の論理が矛盾に満ちている(日本医師会のリポート 参照)ためもあり、今までのように好々爺よろしく「仕方がないね」と黙認されることはありませんでした。
統計で描く高齢者像
統計局・統計センターの「統計からみた我が国の高齢者」(9.14.1998)を見ると、65歳以上の人口は2049万人で, 総人口の16.2%を占めるまでになりました。1979年に1031万人であったので、この20年でほぼ倍。そしてその割合は、確実に増え続けることが予想されます。国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2015年には3188万人(25.2%)と総人口の4人に1人は65歳以上になると見込まれています。
ただ、そのときも65歳が高齢者の範囲に入っているかは疑問で、60代は「働き盛り」で「アブラギッシュ」と呼ばれているかもしれませんが。
いずれにしても、年令がそのくらいの人たちの消費行動を無視して、計画の立案などできなくなったということでしょう。
誤解を覚悟していえば、「欲望の喚起と消費行動」という図式の中で生活してきた私たちは、テレビから多くの情報を得てきました。なるほどテレビは、欲望喚起の先兵として、十分機能を発揮してきたし、これからもその役割を強化していくことでしょう。
しかし、テレビは、その永い習慣のためか?健康に関する情報でさえ、欲望に変換するので、「切実な問いかけ」にたいしては必ずしも有効なメディアとは思えなくなりました。
保健医療に関する世論調査
ところで、「保健医療に関する世論調査結果について」(11.19.1998)が、昨年11月に東京都から発表されました。
介護保険制度が、平成12年度に発足するということで、そこで中心的な役割を担うであろう「かかりつけの医師」についての意識調査ということです。
また、この調査で目をひくのは、欲しい保険医療情報(複数回答)として、
「評判のよい医師・病院・保健(福祉)施設について」が27%、
関心のある保険医療問題として、「痴呆症や寝たきりなど高齢者の病気と看護(介護)、介護保険制度」が48%。
つまり、地域に密着した病院や医院が、高齢者の医療サービスに何を提供してくれるのかに強い関心を持っています。
| 「カルテの開示」を望む人 | ||
| どんな場合でも知りたい | 54% | |
| 病名や症状による | 34% | |
| どんな場合でも知りたくない | 9% | |
| 病気になって、いくつか治療方法がある場合に自分で治療方法を選びたいか | ||
| 病気や症状のいかんに関わらず、自分で選びたい | 32% | |
| 入院や手術、あるいは長期的な治療が必要なときは、自分で選びたい | 31% | |
| 病気・症状のいかんに関わらず、医師に任せたい | 32% |
また、消費者が期待するサービスの内容は、「患者自らの体にまつわる情報」が、医師からも与えられること。そして、その前提として、判断の材料や基準となるような情報が先取りされていなければならず、行政やマスコミの強い圧力に耐えられるような高齢者であるためには、相当に情報収集し学習しなければならないようです。