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健康・スクラップブック


ダイオキシンと企業

 7月9日(1998)の東京新聞夕刊に、信越化学工業の金川千尋社長がマスコミのダイオキシン問題のとりあげ方を批判しています。

 要約すると、すでにヨーロッパではダイオキシン問題は解決済みであり、一番ひどかった20年前に母乳を飲んだ人たちが大丈夫なのだから、今の母乳は問題ないはずだ、と言っています。

 また、一部の人たちは、塩化ビニールをやめればダイオキシン問題が解決すると考えているが、スエーデン・ウメオ大学環境化学研究所のクリストファー・ラッペ教授によれば、塩化ビニルがあってもなくても同量のダイオキシンが発生する。
 焼却条件を改善してゴミを高温で完全燃焼させることなどで、すでに欧米ではダイオキシン問題は解決済みであり、塩化ビニールを消費し続けてもかまわないのではないかという意見です。
 そして、マスコミは科学的で正しい情報を扱ってほしい、と結んでいます。

 たいへん失礼な言い方になりますが、金川社長の真意はどこにあるのでしょう。

 そこで、信越化学工業のホームページへ行き、調べることにしました。

 残念ながら、7月15日現在、商品パンフレットのようなものばかりで、ダイオキシンと塩ビについては何も書かれていませんでした。

 同業の三協化成には詳しいデータがのっていたので、そのホームページの住所をご紹介します。
 「ダイオキシン問題と塩ビ」というテーマで、国立公衆衛生院 廃棄物工学部長の田中勝先生がレポートを書いています。
 要旨は、「社会にとってある物質が必要か否かを判断する際には、その利便性と経済性、環境性、さらには代替品のメリット、デメリットを総合的に判断して、そのモノを排除するか残すべきかを考えるというのが正しい姿勢であるはずです。ダイオキシンの発生に寄与しているものはすべて排除しろという論理は極端であって、私はもっと冷静な議論を社会に期待しています」という言葉の中にあると思います。

 「ある物質」と言うのは、もちろん塩化ビニールを念頭におかれていますが、わたしたちも「灰色」と呼ばれる物質について早く結論が出て、使っても差支えのない状況になることを望んでいます。

 ただ、この「利便性や経済性」ということを考える時、この「利便性や経済性」を支える大人の感覚に誤りがあり、これこそを変える必要があると感じており、それゆえに正しい情報の提供を業界団体や行政機関に期待しているのだと思います。

 しかし、三協化成の「ヨーロッパ各国ではすでに塩化ビニールの規制を解除し始めている」というレポートの内容は、日本と欧米の状況の違いを故意に隠しているように見え、信じにくいものです。

 例えばスウェーデンは、ダイオキシンの空気中の濃度に関して、日本の状態と比べて1〜2桁違っていて、日本が0.63〜0.2pg/TEQ m3とすると、スウェーデンは0.024〜0.0044pg/TEQ m3にまで低くなっています。
 それは欧米の各国が、1980年代からダイオキシン問題について、真剣な取り組みをし、その克服のために多くのコストをかけてきました。

 「企業の環境対策」という本によれば、「北欧諸国の中でスウェーデンは、特に環境問題に熱心な国としてとみに有名である。アスベストや有害重金属をいち早く規制し、原子力発電も廃止をしているなど、いわば環境政策の優等生ともいえる。このスウェーデンの、ひとりあたりの年間ゴミ排出量は約300kgで、日本の場合の3分の2以下である。国全体では240万トンで、これ以外に30万から50万トンの紙やガラス瓶がリサイクルされていると推計されている。」
 というように、リサイクルや容器のデポジットが徹底されていてたり、環境を汚染する可能性のある有害物質は、できる限り生産段階から排除していこうという意識が人々の間に定着しています。

 また、ゴミを焼却する量という面から見ると、欧米諸国は日本に比べて極端に少ないことが、「ダイオキシンの問題解決をわずか10年で成し遂げた」のかもしれません。これは、焼却施設数を見ると分かります。例えばスウェーデンは公共焼却施設数が17、ドイツが53、これに対して日本では1854です。また、日本で大変だなと思わせるのは、民間焼却場を入れると11000(焼却能力200キログラム/1時間以上)に加えて100000(焼却能力200キログラム/1時間以下)と膨大な数の焼却施設にゴミ処理を頼っていることです(1997年5.8読売新聞)。

地  域濃 度(pg-TEQ/m3
日 本工業地帯近傍住宅地域0.63(0.01〜2.6)
大都市地域0.37(0.00〜3.0)
中小都市地域0.20(0.00〜1.1)
ドイツrural area0.025〜0.070
not polluted area0.013
suburb0.09
urban/industrial area0.12
near point sources0.74
スウェーデンrural area0.0044
suburb0.013
city0.024
資料:平成6年度環境庁調査結果、外国分は酒井伸一京都大学助教授の資料(ダイオキシン汚染(1993))

 ダイオキシン対策は、残念ながら日本では昨年から始まったばかりで、調査の段階です。そして、ダイオキシン減量の明確な政策が打ち立てられていないため、「ダイオキシンというものは本当に危険な物質か?」と妙な余白ができてしまうのかもしれません。


参考資料:
「ダイオキシン汚染」青山貞一 法研
「企業の環境対策」森下研 日本経営協会総合研究所
関連URL:
Shin-Etsu Chemical Homepage 信越化学工業
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