イギリスの Food Surveillance Information Sheets,1997は、「食事並びに母乳中に含まれるダイオキシンとPCB(DIOXINS AND POLYCHLORINATED BIPHENYLS IN FOODS AND HUMAN MILK,JUNE 1997)」、「ダイオキシンと食物ーイギリスにおける食物摂取(Dioxins in Food - UK Dietary Intakes (July 1995))」の2つのレポートで、1982年と1992年のそれぞれの食品中に含まれるダイオキシンの量を調べたところ、この10年間で約3分の2に減ったと報告しています。
また、人のダイオキシン暴露については、成人の平均で1982年に 4.1 pg TEQ/kg bw/dayであったものが、1992年には1.5pg TEQ/kg bw/dayに減っています。
ただし、これがどういう原因で減ったかについては、裏付けをもった明確な答えがないということです。一日当たりの脂肪摂取が1982年に92g、1992年には72gに減ったなど、全国的な食習慣の変化が関連するのかもしれないとも言っています。
イギリスでは、1990年に環境保護アクトにより新しい制御基準が採用され、1992年8月にはじめてその基準 1ng TEQ/m3 にそったゴミ焼却炉が建設されました(達成目標は0.1ng TEQ/m3)。そして、すでに稼働している施設については、1996年10月までに基準に適合させるか、できないなら閉鎖をすることになっています。したがって、1992年の調査では、新基準のゴミ焼却炉が環境に好影響を与えたというよりも、欧州全体が危機意識をもち、ゴミ(リサイクルの徹底)や食事(低脂肪の献立)への見直しの気運が、結果的にダイオキシン暴露量を減らしたものと考えられています。
一方日本では、厚生省が作成したガイドラインで、ゴミ焼却炉の暫定基準値の80ng TEQ/m3、それにパスできなかった施設が100を超えています。これを見るだけでも、イギリスをはじめとした欧米諸国の対策が迅速で、しかも厳しいものであることが分かります。
厚生省のことはさておいて、ここでは脂肪分とダイオキシンの関連を調べたいと思います。
Food Surveillance Information Sheet Number 105では、高カロリーの食事と低カロリーの食事に分け、さらにこれを平均的グループ と高レベルグループにそれぞれのダイオキシン暴露量を調べています。高レベルグループというのは、摂取カロリー量が高く、動物の肉などを元気いっぱい(robust)?に食べ、脂肪分を多くとるグループです。その違いは次のようです。
Food Surveillance Information Sheet Number 105
| a) Upper bounddietary intakes | ||||
| 年令/グループ | 高カロリーの食物摂取の評価 (pg TEQ/kg bodyweight/day> | |||
| 平均的グループ | 高レベルグループ | |||
| 1982 | 1992 | 1982 | 1992 | |
| ダイオキシン | ダイオキシン | ダイオキシン | ダイオキシン | |
| 幼児- 年令 1.5-2.5才 | 10.0 | 3.7 | 16.0 | 5.8 |
| 学生- 年令 10-15才 | 5.0 | 1.0 | 9.0 | 2.9 |
| 成人 | 4.1 | 1.5 | 7.4 | 2.6 |
| b)lower bound dietary intakes | ||||
| 年令/グループ | 低カロリーの食物摂取の評価 (pg TEQ/kg bodyweight/day) | |||
| 平均的グループ | 高レベルグループ | |||
| 1982 | 1992 | 1982 | 1992 | |
| ダイオキシン | ダイオキシン | ダイオキシン | ダイオキシン | |
| 幼児- 年令 1.5-2.5才 | 9.4 | 2.4 | 15 | 3.7 |
| 学生- 年令 10-15才 | 4.6 | 1.1 | 8.4 | 2.0 |
| 成人 | 3.8 | 1.0 | 6.9 | 1.7 |
日本の食事とダイオキシンの状況は、8月4日 日経新聞夕刊の「広がる大気のダイオキシン汚染」という記事が参考になります。「京都大学の酒井伸一助教授の調べでは、人間の体がダイオキシンを取り込むのは食品からが九割以上を占め、大気や飲料水を介した摂取は少ない。食品ごとの内訳では魚が約六割で、乳製品と肉類がそれぞれ約一割。」
また同記事では、「愛媛大学の松田宗明助手らが昨年、日本近海でとれて市場に出回った魚を調べたところ、サバ100g当たり最大216pgのダイオキシンを検出。マイワシやハマチなどを含めた近海魚の平均は同89pgだった。一方北欧産のシシャモやオーストラリア産のキスなど輸入魚は平均同8pg。日本近海でダイオキシン汚染が広がっていることを示唆している。」
日本では、ダイオキシンの健康影響を測る尺度として TDIを、厚生省が 10pg/kg bodyweight/day、環境疔が5pg/kg bodyweight/dayとしてます。これは、例えば体重60kgの人だと一日600(300)pg以内であれば、とりあえず当面の健康上に悪い影響は出ないだろうという数値です。
日本人の魚介類の平均摂取率は一日当たり95gとされ、アメリカの6・5gと比べて15倍もあり、ダイオキシンの影響がどの国よりも深刻と思われます。厚生省では、「近海魚だけを毎日食べ続けたとしても許容量の五分の一以下で、危険な水準にない」と妙なことを話しています。「妙」というのは、日本人は一日魚一匹を食べて暮らしている訳ではなく、そのほかに米や肉や、牛乳などを2000kcalくらいはとっています。
イギリスのMAFFが概算したところでは、1982年のダイオキシン対策以前のレベルで、0.120pgTEQ/kcal、 つまり1kcal当たり0.120pgのダイオキシンが体に入っていると見なされます。そこで、仮に計算してみると、身長175cmの体重60kgの男性で、2600kcalの所要量、ダイオキシンの暴露が一日平均で312pgとなり、厚生省のTDIで600pg、環境疔のTDIで300pgということから、決して「危険な水準にない」という表現にはならないと思われます。