世界の感染症サーベイランスと情報提供

健康・スクラップブック

世界の感染症サーベイランスと情報提供

 「伝染病」は、過去20年間「もうすでに人類が克服しつつあるもの」という楽観的な感じで見られていました。「日本脳炎は過去の話」「ペストは物語の中で生きるだけ」みたいな考え方が支配的ではなかったでしょうか。

 しかし、実際は過去20年間に、「エイズ」や「ラッサ熱」「エボラ出血熱」 など30もの新しい伝染性の疾患が、世界中で生まれ多くの人を苦しめています。また、脳膜炎やペストやコレラなどは、永い安定期を抜け、再び公衆衛生の対象として主役に返り咲いてしまったようです。日本でも、1996年にはO-157が、そして今年(1998)はインフルエンザが猛威をふるっています。

 感染性の病気で死亡した人は、世界中で1750万人で、これは全死亡者のおよそ33%にあたります。そして、死亡者の原因別の感染経路は、人-人感染が65%、食べ物や飲み物が22%、昆虫が13%、動物が0.3%となっています([Deaths due to selected infectiouse diseases,1995 estimates] WHO)。

 WHO(世界保健機関)のリポート「Division of emerging and other communicable diseases surveillance and control」(要緊急性および伝染性疾病分野の調査と管理)によると、1996年に世界の各地域で流行した感染症には次のものがあります。

 (日本だけでなく、)「世界中で感染性の疾病に対して注意深さが欠けていたため、その対策は後手に回ってしまった」とリポートされ、「そのために払うコストも莫大になった」とされます。また、旅行や交易、そして経済的開発が急速にそして広範囲で展開されるので、免疫を持たぬビールスが入り込む余地が多く、それだけ感染症対策を難しくしているようです。

   主な感染経路として、4つがリストアップされています。

  1. 空気感染(経気道感染)麻疹、水疱、結核など
  2. 飛沫感染(経口感染)ジフテリア、マイコプラズマ肺炎、百日咳、インフルエンザ、溶連菌性咽頭炎 、流行性耳下腺炎、風疹
  3. 接触感染ブドウ球菌感染による皮膚疾患、単純ヘルペス、膿痂疹、疥癬
  4. 血液による経皮感染(または直接接触)B型肝炎、C型肝炎、エイズ

 それに対する予防策は、感染防止のための情報と知識を得る事が大切ということです。日本では保健所がこの役割を果たしてきましたが、財政上の理由からか、組織が縮小されています。1996年のO-157の緊急時には、必ずしも情報提供が十分されず、患者が適切な医療を受けられるような病院にたどり着けないことがありました。
 この痛恨時から何かを学ぶことができたでしょうか?

 「どうしてこうまで感染性の疾病の脅威にさらされることになったのでしょう?」という問いに対して、WHOのリポートはこう答えています。
 「多くのファクターが、この緊急性を要する感染性疾患とその復活に関与しています。人口の増大、移民(難民を含む)、都市化、そして最もキーとなる貧困があげられます。それは、不十分な収入と、感染性疾患に対する公衆衛生のインフラストラクチャーの悪化との相互作用によるものと思われます。また、人の生活習慣も大きく変わり、世界旅行や貿易なども歴史始まって以来のレベルになり、土地利用変化や農薬の問題、そして気候や環境条件の変化が、感染性疾患の原因との接触と、その流行に寄与しているのかもしれません。そして、バクテリア(微生物)を撃退するために薬剤を使いつづけ、また病毒媒介昆虫を撃退するために農薬を使ったため、その(自然からの)反撃という意味の、何かいわく言い難い関連性がいわれています。」

 次回は、例えば旅行者が「どこでどんな感染症が流行し、その対策として何をすべきか」などを調べ、ご報告します。


用語解説
ウイルス 生きた細胞内でのみ増殖する。抗生物質は無効。
感染症 感染した微生物に対して、人体がこれらを殺菌排除しようと反応し、臨床症状が惹起された状態。
感染 種々の微生物が、本来それらが存在しない人体の部位に入り、かつ増殖する状態をいう。
関連URL:
Emerging and other Communicable Diseases Surveillance and Control (EMC) 世界保健機関
Hospital Infections Program(院内感染対策) アメリカ疾病管理予防センター
HEALTHY PEOPLE 2000 Progress Reviews アメリカの2000年健康目標
HIV訴訟を支える会 

参考資料
感染対策ハンドブック 小学館
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