米牛肉に発がん物質?

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米牛肉に発がん物質?

EUが米牛肉禁輸と報道される
 昨日(5.4.1999)東京新聞の朝刊に「米牛肉に発がん物質」という見出しで、『欧州連合欧州委員会が、米国産の牛肉の肥育で使用されている6種類の成長促進剤の一つで天然ホルモンの「エストラジオール17ベータ」は、発ガン物質であるとする専門委員会の報告書を公表した。欧州委員会は促進剤を使った米国産牛肉(ホルモン牛肉)の輸入を禁止。さらに最新の調査で、促進剤を使っていないはずの米国産牛肉にも促進剤の残留物が含まれていることが分かり、6月15日からは米国産牛肉の輸入を停止することになっている。報告書は、米国の牛肉業界が使用している成長促進剤の中の「エストラジオール17ベーータ」は「完全な発がん物質とみなすべき証拠がある」と指摘し「発がん、がん促進の効果がある」としている。』(ブリュッセル3日共同)という記事が掲載されました。

 アメリカ産の牛肉や牛肉製品は、日本にも輸入されているだけに、この記事をどのように読んだらよいのでしょうか。

食用動物にエストラジオールが使われる理由
 アメリカの農務省(USDA)の「EFFECT OF EXOGENOUS ESTRADIOL ON PLASMA CONCENTRATIONS....」の文書によると、食用去勢牛に長期間にわたってエストラジオール-17ベータ(Estradiol β-17)のようなホルモン剤を投与し続けると、インシュリン様の成長ファクターの分泌が活発になる。しかし、どうしてこれが牛を少ない飼料の量で成長させるかは、はっきりと分かっていない。ただ、経験的に飼料を効率的に良質な肉に変換させることが知られ、アメリカやカナダなどで使われている、ということです。
 ちなみに、日本では、この物質は薬事法で「承認されていない」そうです。

欧州とアメリカは長い牛肉の闘いがあった
 ヨーロッパ諸国は、ホルモン剤を医薬品用途で使うことは許しているが、1981年に5つのホルモン剤を成長促進剤として使うことは禁止しました。その5つのホルモン剤とは、

  1. Estradiol
  2. Progesterone
  3. Testosterone
  4. Zeranol
  5. Trenbolone acetate
       前の3つは自然ホルモンで、後の2つが合成ホルモンです。
 アメリカFDAの「Chronology of the European Union's Hormone Ban」(EUがホルモンを禁止した年代記)によると、1989年には互いに経済の報復合戦にまで発展し、レーガン大統領はEUからの輸入品に100%の関税を課すなど、強硬な措置をとりました。一方、ヨーロッパの側も、アメリカの圧力に屈することなく、自らの主張を貫き通したようです。

 牛肉は、アメリカにとって特別な戦略的な生産物のようで、政治的な匂いに満ちています。
 1995年1月にガットウルグアイラウンド協定(The GATT Uruguay Round Agreement)のThe Sanitary and Phytosanitary Agreeement (SPS)や、1998年に世界貿易機関(WTO)を舞台にDispute Settlement Body (DSB) で、EU(欧州連合)に揺さぶりをかけてきました。
 そして、このアメリカがWTOに提訴し、欧州に求めたルールの遵守は、今年(1999)の5月13にデッドラインを迎えるということです。
 つまり、WTOは、アメリカが使っている5つのホルモン剤が、人の健康にリスクを与えるような科学的な証拠が見出せない以上、EUはすみやかに「食用動物へのホルモン剤使用の禁止」を撤回すべきという仲裁案を出しました。そして、この仲裁案に対する最終的な回答期限が、この5月の13日に迫っていたというものです。

EUの主張
 EUは、このデッドライン直前の3日(5.3.1999)に、「エストラジオール-17ベータは、はっきりと発がん性があるとして、米国産牛肉の輸入禁止を決定し」、アメリカやカナダなどの牛肉輸出国とWTOに「ホルモン剤禁止措置を続ける」との意思表示をしたと思われます。
 EUの「Agriculture, Foodstuffs and Health」ホームページ、「General conclusion and answers to the questions in the mandate - Final」(執行命令に対する一般的な結論と、質問と解答-最終版)によると、「問題となっている6つのホルモン剤が牛の成長促進剤として使われ、牛肉や牛肉製品に残留することで、潜在的に人の健康へ悪い影響を持つか」という質問に対して、

「それらの影響は、原因となる物質とその代謝物によりつくり出される。過去における残留の分析は、その原因となる物質とこの代謝物がホルモン様の働きをするかどうか定量化することに焦点が当てられた。最新のデータによれば、その他の代謝により、付加的に遺伝子毒性(genotoxic)を生じさせることが分かってきた。例えばエストラジオール-17ベータは、2-OHと4-OHそして16α-OHエストロゲン(estrogen)に代謝される。特に、2-OHと4-OHエストロゲンは、直接または間接的に遺伝子毒性(genotoxic)に関与することが分かっている。このことは、エストラジオール-17ベータが発がん(tumor initiator)とともに、がん促進(tumor promoter)の働きがあるかもしれないと言える」、と結論付けています。

 ところで、エストロゲンという物質は、ここで問題になっている発がん性の他、遺伝毒性、胎児毒性、内分泌かく乱、生殖毒性など、長期間続けて摂取することで、ことに未発達な子供への影響が心配されています。そうした意味も含めて、EU(欧州連合)は、食用動物へのホルモン剤の使用を禁止したのだと思われます。


関連URL:
EFFECT OF EXOGENOUS ESTRADIOL ON PLASMA CONCENTRATIONS.... USDA
Chronology of the European Union's Hormone Ban USDA
EC measures concerning meat and meat products(hormones)PDF書類 WTO
General conclusion and answers to the questions in the mandate - Final EU(欧州連合委員会)

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