「食品の安全性」という言葉は、それ自体分りにくい感じがします。
「植物は自らを守るためか、しばしば毒を持つ」ものですし、また一方で「スーパーマーケットに陳列してあるものは全部安全であるべき」という気持ちもあります。言い換えると、植物の本来の性質を人が食べるために都合の好いように変え、便利に食べてきたわけなので、「食品の安全性」というとき、なぜか混乱してしまうのかもしれません。
また、遺伝子組み換え植物は、ウイルス抵抗性や害虫抵抗性など、わざわざ毒性のあるタンパク質を作らせるように遺伝子を操作するというので、いっそう分りにくくしています。
とりあえず遺伝子組み換え食品の問題で、安全性と言う時、2つの内容があります。
バイオテクノロジー応用食品の安全性評価については、1996年9月〜10月ローマにおいて「バイオテクノロジ一と食品の安全性に関するFAO/WHO合同専門家会議」が開催され、国際的な指針が示されました。
また、バイオテクノロジーを利用した食品の表示に関する国際ルールを定める会議として、1997年4月にカナダのオタワで、国連合同国際食品規格計画(CODEX)の食品表示部会が開催されました。
日経バイオの記事によると、「組換え農作物利用食品の表示については、北米、欧州の間で対立が激しく、すぐに国際的な統一ルールを作れる状況にはない。米国、カナダが原則として表示不要と考えているのに対し、欧州連合(EU)では生細胞(living organism)を含有するものは表示が必要との規則を5月中旬にも運用開始する。両者の対立が激しい一方、日本政府の方針は決定していない。農林水産省がバイオテクノロジー利用食品の表示に関する検討事業を4月から開始し、表示のあり方について議論がようやく始まろうとしている段階だ」ということで、一般的に農産物輸出国と輸入国の間で意見がまっ二つに別れている模様です。
アメリカやカナダや中国などの農産物の輸出国は、コストを低く抑えることができる遺伝子組み換え食物を、「今までとなんら変わりがないもの」(実質的同等)と主張し、貿易がスムースに進むことを望んでいます。また、FAO/WHO合同専門家会議でも、同様の結論がだされました。
一方、農産物輸入国の方では、「そんな評価が十分にされていないものを押し付けられては困る」と反発しています。
ともかく、農産物は各国それぞれの事情や戦略があるので、貿易は、当事国間の「お話合い」で決められるということです。
それで、国会では、「遺伝子組換え食品の表示問題等に関する小委員会」が6月12日(1997)に設置され、調査が始まりました。ここのところの事情は、河野太郎衆議院議員のホームページに詳しく掲載されています。
この記事によると、議論の中心は「すでに遺伝子組み換え食品は輸入され流通しているのだから、安全性を再び国会で議論するのはどうか、ラベルの記載に問題を絞るべき」ということです。つまり、主要な対貿易国であるアメリカやカナダに、遺伝子組み換え食品とそうでないものの区別が技術的に可能か、ラベルへの記載ができるかなど、個別に話し合われることになるようです。
日本は、下の資料にあるように、米を除く穀物の多くを輸入に頼っています。除草剤耐性ダイズで話題の「大豆」にいたってはわずか5%の自給率に過ぎません。40%をアメリカから、20%を中国から輸入しています。
その他、畜産業で使われる動物の飼料である粗粒穀物なども、年々輸入量が増えています。それゆえ、この話し合いの行方が、わたしたちの食生活に直接響いてきます。
遺伝子組み換え食品とラベルで、表示に関わる法規として次の二つがあります。
| 穀物 | 国名 | 貿易量(%) |
| 小麦 | アメリカ | 30.4 |
|---|---|---|
| カナダ | 15.4 | |
| オーストラリア | 7.1 | |
| とうもろこし | アメリカ | 77.3 |
| アルゼンチン | 7.7 | |
| フランス | 8.3 | |
| 大豆 | アメリカ | 71.6 |
| ブラジル | 10.9 | |
| アルゼンチン | 8.0 | |
| 中国 | 1.2 |
| 食物名 | 穀物 | 小麦 | 粗粒穀物 | いも類・でんぷん | 砂糖類 | 大豆 | 野菜類 | 肉類 | 油脂類 |
| 単位% | 30 | 7 | 1 | 87 | 35 | 5 | 85 | 57 | 15 |