情報源としてのHACCP

健康・スクラップブック

HACCPとローカライズ
  HACCP(Hazard Analysis-Critical Control Point System)は、ローカライズして初めて導入のメリットがあるようです。
 それは、例えばFDAの「Federal Register/Vol.63/Proposed Rules」(4.1998)で、「HACCPシステムが、ローカライズされたマネージメントの道具として使われないなら、国内および海外における食品の安全性にはっきりとした改善がもたらせない」と書いてあります(p.20460)。
 また、月刊HACCP 98年5月号のインタビューで厚生省の中村優子氏は「食肉製品、乳製品はそれぞれの業界でジェネリックモデルを使ってトレーニングを実施し、申請を出しているようですが、水産業界の場合も基本的には同じですか?」という質問に対して、「水産業界の場合は、もうすでに輸出するためHACCPプランを作成し、実施されている方もいますので、特にジェネリックモデルを気にせずに進めていただいてもいいと思います。最終的には自社の工場において自社のHACCPプランを立てなければいけません。中略__(ジェネリックモデルに)あんまり頼り過ぎない方がいいと思います」と答えています。
 つまり、必ずしもジェネリックモデルが有効でない場合があり、個々のシチュエーションで危害分析や評価モデルを独自に作って始めてHACCPシステムが機能する。そしてその機能とは、HACCP実装が任意であるけれども、他の競合企業に対してアドバンテージをもたらすようなビジネス戦略でもあると捉えられています。

カイワレダイコンとHACCP
 日本の水産業界が、始めてHACCPを導入したのは、1995年12月です。それは、貿易相手国(EU)の基準により、「95年4月、日本の水産物に対してEUはHACCPに基づく規制に不適合との理由から禁輸措置をとった」ことがきっかけです。こうした経緯があり、「97年12月18日から対米輸出水産物においてもHACCP導入が義務づけられた」ということです。

 また、堺市や岡山市のO157の集団下痢症を契機に、その後1996年10月14日に「かいわれ大根生産衛生管理マニュアルの策定等について」が厚生省により発表されました。これは、HACCP(危害分析重要管理点)方式の考え方を取り入れて策定された、かいわれだいこん生産マニュアルといわれるものです。
 しかし、今までのカイワレダイコンの栽培方法のどこが悪かったのか、そしてO157が侵入した地点がどこだったのかなど分かりにくく、それは「衛生管理はちゃんとするように」といっている感じです。

ジュース飲料とHACCP
 一方、アメリカの政府機関が出す文書は、内容がより具体的で分かりやすいです。
 前出の「Federal Register/Vol.63/Proposed Rules」(4.1998)は、ジュース飲料業界がHACCP導入にいたるまでの経緯を親切に解説しています。
 このリポートによると、アメリカのジュース飲料業界は、1990年から1995年の間に10回のリコール(製品回収)を経験しました。また、熱処理しないで病気にまで発展した事例は、5件あり

  1. トマトジュースで成分中の窒素のレベル(土壌からトマトに移行)が高すぎたため缶の成分が溶出(113人の被害)
  2. グアナバナ(guanabana)ジュースで、グアナバナの種が汚染されていたため中毒なる(9人)
  3. スズがパインジュースに混入
  4. 12オンス入り輸入フルーツジュースが原因で、生後18ヶ月の子どもの血液が鉛36μg/dlの高レベルになった
  5. 悪いパッケージが原因で、フルーツパンチジュースの缶にコーティングされたスズが溶出した となっています。
 そして、1991年から1997年の間に、設備の洗浄液(カセイソーダやアルカリクリーニング液)の混入やパイプラインのクラック(銅の溶出)など衛生管理の不備により、ジュース飲料のリコールが5回発生しました。(p.20451詳細は略)
 さらに、農薬関連では、ジュースに使われるような国内産の果物や果物加工品を調べたところ、1411検体中1%に法定基準(violative)以上の農薬が検出されました(1994年)。また、2535の輸入された飲料関連のサンプルを調べたところ、その1%に法定基準以上の農薬、3%に法定基準以上の残留農薬が検出されました。

 O157(腸管出血性大腸菌)については、アップルジュースが原因で、アメリカ各地で1996年8月に発生(outbreak)しました。それは動物の排便が排水経路からジュースの原料のリンゴに付いてしまったらしいです。

ケーススタディを通じたHACCPの導入
 そうした経験を経て、FDAは、ジュース飲料業界や消費者や消費者団体、そして貿易関連団体や地方政府や議会などと話し合いをもちました。ジュース業界が生産過程で変えるべきポイントを絞るため、

  1. FDAのジュース飲料への規制プログラムはどのように改定すべきか
  2. 当面の安全性を確保するため議論と情報交換をする
  3. 適切な場所に調査を実施する
  4. 消費者に対して付加的な教育の必要性があるか考える
  5. ジュース由来の病気の発生を予防するため、他の評価法などが必要か などが話し合われたそうです。
 こうした議論を通じ、 HACCPに期待すること
 一部の消費者団体から、HACCPが消極的に扱われることがあります。
 例えば、「逆性せっけんは危険」とか「塩素殺菌剤の使用量が増えてしまいそう」、そして「衛生ばかりに気を使って弱い子どもになる」、「工場で働く労働者の負担が重くなる」などがHACCPとの関わりの中で言われています。
 しかし、HACCP批判は、まだ具体的な事例(HACCPの導入前と後の分析)をもとに話されることがないので、その行き過ぎに対する注意喚起の意味なのだろうと感じます。

 ただ、食料品の国際化が進む中、微生物由来の危害が心配されるので、HACCPという食品と安全性について共通の言葉を持つことは、消費者にとっても有益に働くかもしれません。
 HACCPは、ラベルへの記載や、企業が情報化に目覚めフィードバックが普通に行われるとすれば、消費者にとって欠くべからざる情報源の一つになると思われます。
 


用語解説:
HACCP 危害度分析に基づく重要管理事項
PP 一般衛生管理プログラム

参考資料:
食品衛生研究(1998 No.5,6,7,8)食品衛生協会
8.24.1996 朝日新聞夕刊
関連URL:
HACCPホームページ FDA
水産業界のHACCPについて 月刊HACCPの記事(鶏卵肉情報センター)
かいわれ大根生産衛生管理マニュアルの策定等について 厚生労働省

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