the stress management in company

健康・スクラップブック

 
ストレス対策も
早期発見・適切な対応が決め手

 バブル経済崩壊後、リストラ、能力主義の導入など、サラリーマンを取り巻く状況は厳しく、ストレスにさらされる機会は多い。ストレス疾患も早期発見・適切な対応が大きくモノをいう。職場環境を把握している企業の「かかりつけ医」産業医が重要な役割をはたす。
(青島洋子)

 転勤や新しい仕事で働きずめだったせいか、ここ1カ月間体がだるく、夜は不眠伏態が続いた。 精密検査を受けてみたが、体のどにも異常は見られず、風邪ではなかと言われた。いろいろ風邪薬を飲んだが、症状は一向に改善されず、あせりばかりが先立つ---。」
 人間の身体は必要以上のストレスがかかると、ウイークポイントに一定のパターンで症状が現れる。
 ストレスを抱えているときに起こしやすい症状のナンバーワンは睡眠障害で、「うつ状態も不眠からつかまえやすい」と言われるほどである。そのほか疲労感、頭痛、肩こり、食欲減退といった症状も、ストレスが引き金となる。こうした身体症状はストレスの警告であることがとかく見過ごされがちで、なかなか根本的な解決に結びつかないことも多い。

 「職場の健康管理は、究極的にはメンタルヘルスという視点から解決しなければよい方向にはもっていけない」と主張するのは三和銀行、東京健康管理センターの埋忠洋一所長。平成元年ころから、従来のメンタルへルス体制に加え、管理者ぱかりでなく、全社員がメンタルヘルスの認識を高めるよう啓発教育を推進してきた。同行ではカウンセリングセンターを設置し、精神科の専門スタッフを配置するなど、昭和40年代より精神衛生には力を入れてきたが、さらに活動の対象を管理者を含むすべての勤労者に広げ、ゆとりある健康管理を目指そうというものだ。そのため健康「診断」ではなく、とくに健康「教育」に積極的に取り組んだ。
 「精神は誰でも病むもの。ストレスがかかると、どのような身体の変化が起きるかなどを理解しておけば、適切に対処できるようになります」(埋忠所長・以下カギの中は埋忠氏の発言)。
 本人にストレスへの認識がある場合とそうでない場合とでは、同じようにストレスを抱えても、その後の結果が違ってくるという。まずは新人教育、その後、社内教育で、ストレスについて認識を深めるようにしている。

ストレスが潜んでいる場合が多い頭痛
 同健康管理センターを訪れる患者に多く見られるストレスが原因の身体症状の1つは頭痛だが、ストレスへの理解があると、事態の深刻化はかなり免れるという。
 「患者の表情や動作、話し方などを十分に観察し、それが風邪やその他の身体的疾患からきたものか、運動後の首筋の張りが原因になっているのか、それともストレスによるものかを診ます。  表情や訴え方の中に悩みや苦しさを感じさせるものが潜んでいれば、ストレス性頭痛を疑い、患者と共に原因を分析します。
 この段階で本人がストレスによる頭痛だと認識できれば解消しやすい。ストレスの原因を探り、解決のための行動がとれるからです」。
 体の不調の原因がストレスによるもので、カウンセリングも必要だと診断された患者は、健康管理センタ−とカウンセリングセンターの両方で治療を受ける。
 「ストレスの原因が錯綜しているとき、それを解きほぐすためにカウンセリングが必要となります。身体症状が現れる場合、1つではなく種々のファクターが複雑に絡み合い、問題を引き起こしています。
 転勤、子供の受験、老親の病気とか。そうそう、家を新築すると貴任の重さから死人が出ると昔は言われたほど。いいことのように思われる結婚や昇進もストレスの原因になりかねないのです
 話を聞きながらストレスの原因を整理してあげることで、本人の問題解決への手助けをします」
 ここでも、ストレスの自覚は治療に有効に働く。症状がさらに重症な場合は、精神科の治療を受けることになる。

潜在的アルコール依存症の増加
 体の不調がさらに新たなストレスを生むというような悪循環に陥ったときに、ストレス症状はうつ病、心身症、無断欠勤、家出、過剰なアルコールの飲用という問題行動を引き起こしやすい。中でも最近、増加が著しいといわれるのが、アルコール依存症とうつ病だ。
 ストレスを解消する方法を持たない人はうつ状態になると、それをまぎらすために酒に走りやすい。またストレスそのものを解消しようと大量飲酒をし、アルコール依存症という深みにはまるケースがある。実際、「アルコール依存症はつかまえにくいが、潜在的なアルコール依存症が増えつつあるとうかがい知れる行動は見られる」とか。健康診断の結果から、γGTP値が相当高い人がいることがわかり、日々の大量飲酒が予想される。アルコール依存症は、徐々にではあるが広がっているようだ。
 多忙で仕事一筋、生真面目な完壁主義のタイプはうつ傾向になりやすい。勤勉でひたすら仕事に励むのをよしとする風潮がある限り、うつ状態やうつ病は増えると言われている。
 「遊びやゆとりのある生き方をすすめるような健康管理が今後は求められると思います。仕事と遊ぴの両立を評価できるようなね」。何事も、ほどほどが大事ということだろうか。
 ちなみにストレス発散法は、男女合わせると、おしやべり、タバコ、酒、買い物、賭事の順だとか。一方、ストレスの直接的な影響として、血圧や糖尿病、痛風の発作などもある。間接的な影響としては、ストレス解消のための過食が肥満の原因になり、その結果、成人病を引き起こすこととなる。現在、間接的な影響が増えつつある。

職場環境の整備とプライバシー
 ストレスが深刻な病状を招かないためにも、同健康管理センターでは、各部店のトップから中間管理職にまでこれを理解させ、さらに部下の表情や行動から、ストレス症状をいち早く見つけられるような指導も行っている。
 ユニークなのは将来の部長、支店長候捕である次長、副支店長らを集めて開かれる半日教室。彼らへの教育を徹底することで、近い将来、メンタルヘルスに詳しい上司のいる明るい職場ができるというわけだ。またストレスへの対応や予防の方法など、具体的な対策も講じている。人間関係の調整、休養のとり方、仕事の仕方、趣味や家庭、余暇などの持ち方、深呼吸やストレッチの技術的なノウハウなどについても社内の研修や健康づくりイベントなどで指導している。
 さらに病気が進行した場合は、個人をタ−ゲットに薬物治療を施すだけでなく、患者を取り巻く環境の整備も必要なケースが出てくる。ただ患者のプライバシーとかかわりがあるだけに、それに対する産業医のきめ細かな配慮、職場の管理者の適切な対応がより重要になってくる。「必要がなければ対個人の治療でおさめますが、中には仕事内容や時問、人間関係などの職場環境を整備しなけれぱならないケースもありますね。
職場や人事部の協力がいることもある。病状を誰にも明かしたくないという患者もいますが、1人でストレスを抱え込み悩み続けることで、一生を台なしにしてしまうこともあります。
 職場の上司に相談したほうがいいとの状況判断を下した場合は、患者本人を説得します。病気の当事者が職場に事情を説明するようにして、『不十分な場合、もしよければ健康管理センターが支援しますよ』というようにですね」
 職場環境を整えるという対応をしないと、解決できないケースもある。このようなときにも、日頃の啓発教育の成果が発揮されるだろう。


     ストレスは早期発見により、病状を悪化させずにすむ。その際、大切なことはストレスによる症状を自分で早く自覚できることであり、自分自身の習慣や仕事への取り組み方、人間関係の調整などである。また周囲の正しい理解と対応も重要になる。予防には、常日頃から会社に献身しすぎず、人生を楽しむこと、趣味や地域社会での活動など、仕事以外に人生を支える術をもつことが必要だろう。
毎日ライフ1997年2月号
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