9.12.1997の深夜のフジテレビのニュース番組によると、ダイアナ元皇太子妃が死亡した自動車事故で、車を運転していたホテルリッツの運転手は、酒ばかりでなく、抗うつ剤のプロザックを服用していた疑いがあるそうです。
もしこれが本当なら、抗うつ剤の使用上の注意には、一般的注意の項目に「眠気,注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、投与中の患者には、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意する」や、「酒により相互の作用が増強される」とあり、事故原因究明に重大な材料となるかもしれません(NetDrug Seek(京都市立医科大学)「三環系抗うつ剤」の検索結果より)。
確かに、新聞にも次のような記事が出ていました。
ダイアナ(元皇太子妃)さん事故運転手
抗うつ剤も検出
アルコール作用促進か
ロイター通信によると、英国のダイアナ元皇太子妃が死亡した自動車事故で、パリ捜査当局者は八日、乗用車を運転していたホテル・リッツの警備担当者アンリ・ポール氏(死亡)の遺体の血液を再鑑定した結果、抗うつ剤の残存物を検出したことを明らかにした。
抗うつ剤は、体内のアルコール作用を促進させる働きがあるとされる。
一方、再鑑定では、血液一リットル中一・八gのアルコールも検出した。法的許容量(〇・五g未満)の三倍以上で、同氏が飲酒運転だったことを再確認した。
ポール氏の最初の血液鑑定は事故直後に実施し、体内二カ所から血液一リットル中一・七五gのアルコール分を検出した。だが、これを不満とした遺族は同氏の埋葬を延期して鑑定のやり直しを要求。ホテル側も飲酒運転を強く否定していたため、捜査当局は違例の再鑑定を実施した。
9.10.1997 東京新聞夕刊
SSRI群の一つプロザックという抗うつ剤は、日本では臨床試験中で、販売には至っていない薬剤です。欧米などでは、 UBワールドネット 海外情報によると、リリー製薬のプロザックだけで40億ドルの売り上げがあった薬で、精神科領域におけるうつ病・うつ状態の薬として重用されてるということです。
SSRI'sは、日本のテレビや健康雑誌でも、注目の新薬としてセンセーショナルに取り上げられています。
一方、インターネットでは、アメリカの大学病院を中心に、さまざまな臨床テストやこれを元にしたレポートが参照できます。
その中の一つで、ミシガン州立大学に興味深い記事がありましたのでご紹介します。
SSRIs vs trisyclic antidepressants(SSRI群 vs 三環系抗うつ剤)
selective serotonin reuptake inhibitors(SSRI)=選択的セロトニン再取り込み阻害剤は、心の病気を治療する際に、第一選択の薬なのでしょうか?
という質問に、このレポートは、担当医師が答える体裁をとっています。
結論からいうと、三環系の抗うつ剤(TCAs)とプロザックなどのSSRIsは、うつ病の治療に関してほぼ等しい効果が得られるということです。(言い換えると、マスコミで騒がれているほど作用と副作用双方で、違いは認められないということでした)
これらのテストでは、81例の無作為の二重盲検法(RCT's)が、予備分析とレビュー、manual cross-refferencing,MEDLINE searching(の裏付け)により採用されました。
これら臨床テストの詳細は、コピーライトがあり、まだ許可を求めていないので書けませんが、SSRIsとTCAsそれぞれの使用期間と使用量別に、副作用が発現する割合などが調べられています。
そして、治療行為が費用対効果(構成要素は、コスト、作用、副作用、使用期間です)として、SSRIsの選択と、TCAsからの薬の乗り換えについて推奨されているケースが上げられています。
また、同じデータベースの「SSRI or tricyclics for depression:A clinical toss-up?」では、ミシガン州立大学の専門医は、SSRIsがどうしてまたこれほどマスコミなどでもてはやされているのか不思議がっています。つまり、それらは薬の効能による評価というようりも、副作用情報の相対的な位置付けや、医薬品業界のマーケティング、文化的な土壌の影響だろうと結論づけています。
アメリカの研究機関が、SSRIの流行現象に懐疑的なレポートをしています。私たちは、SSRIsに過度の期待をすべきでないのかもしれません。
いずれにせよ、うつ状態などの心の病は、気が滅入った状態やそれに関連するさまざまな障害を認識し、なるべく早期に適切な対策(運動や休養とカウンセリング、薬物療法)をとることが鍵となるようです。