土壌とダイオキシン

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土壌とダイオキシン

ダイオキシンの摂取経路
 農家の子どもが、ダイオキシンを摂取する経路は、アメリカEPA(アメリカ環境保護局)の「Risk assessment suport to the development of technical standards...」によると、次のようなシナリオが想定されています。  どの程度の量か?については、地域により差があるとは思いますが、ここでは、EPAがオハイオ州のコロンバス焼却施設周辺地域の調査リポート「A SCREENING LEVEL RISK ASSESMENT OF THE INDIRECT IMPACTS FROM THE COLUMBUS WASTE TO ENERGY FACILITY IN COLUMBUS OHIO」(オハイオ州のコロンバス廃棄物焼却エネルギー施設から受ける間接的なリスクについてのレベル評価テスト)が参考になると思います。

 オハイオのコロンバス焼却施設は、1980年初頭に操業を開始し、1992年にダイオキシン対策として施設を大改修(MACT technologies を導入)するまでの12年間、ダイオキシンを384ngTEQ/m3毎日排出し続けました。
 これにより、母親の皮膚接触や吸入、食物などからダイオキシンが、その時期(調査の第一期)に、663pgTEQ/day摂取されました。そして、ダイオキシンの乳幼児への移行は、このデータをもとにすれば乳児が800gの母乳を飲むとして、3020pgTEQ/dayという計算になるということです。
 これは、WHOが昨年(98)5月に設定した1〜4pgTEQ/kg bodyweight/dayという耐容一日摂取量と比較して、乳幼児の体重を3〜8kgとして計算すると、94倍から1007倍のダイオキシンが子どもに移行したことになります。( WHOはたとえダイオキシンを含むとしても母乳による育児を推奨しています)

土壌とダイオキシン
 今回の一連の野菜不買の動きは、埼玉県所沢のJA(農協)が情報を故意に隠匿したことがきっかけでした。
 1999.2.10の新聞(東京新聞日刊)によると、JAの調査でホウレンソウ5検体については、0.43pg〜0.22pg(ただし泥付きのものは0.71pg)が検出されました。これにより、厚生省は、「全て所沢産のホウレンソウを食べたとしても、WHO(世界保健機関)の耐容一日摂取量の1〜4pgを超えない」として安全性を保証したということです。

 前出のリポート、オハイオ州コロンバス焼却場周辺地域の場合は、ダイオキシン対策前で、野菜に0.04ng/kgのダイオキシンが含まれていました。pg(ピコグラム)に換算すると、10億分の1gが1ng(ナノグラム)で1兆分の1gが1pg(ピコグラム)なので、0.04pg/gです。
 そしてダイオキシン対策が焼却施設になされた後の1994年は、この野菜のダイオキシン濃度が0.01ng/kg(0.01pg)まで下がったということです(約30年後、0.0001pgになると予測される--2.12修正)。

 ところで、アメリカやイギリスなどの欧米諸国が、ダイオキシンの摂取経路として最も警戒しているのは、牧草や穀類、豆類などの飼料が汚染された場合の肉牛や乳牛、そして家きん類や卵からの影響です。
 ダイオキシンは、脂に容易に溶けるため、動物の組織に分解されることなくそのまま蓄積されていきます。
 それで、農作物を作る際に土壌がどれほどのダイオキシンで汚染されているか、常に監視しなければならないとうことです。国によってまちまちのようですが、環境庁が調べた「ダイオキシン類による土壌汚染対策事例海外調査の概要」によると、ドイツでは農用地に対するガイドライン値は、40pgTEQ/gで、この値を超えたら「ダイオキシンに汚染される可能性のあるホウレンソウなどの濃度を調査する」ということです。ただし、このガイドライン自体は科学的な理論に基づくものではないと(日本の環境庁により)指摘されています。
 また、フランスでは、アルアンの都市ゴミ焼却施設に隣接する牧場の牛乳中のダイオキシン濃度が高いことが問題になった(14.14〜15.91pgTEQ/g fat)ことがあるが、この時に農地土壌で10〜60pgTEQ/g、牧草で10〜40pgTEQ/gの汚染レベルだったということです。

ダイオキシンと発がんリスク評価
 発がんリスクは、EPAの前出のリポート5ページに掲載されています。
 

RISK=1-exp(-q*LADD)

 という計算式です。
 LADDは、一生を通じた一日平均摂取量(Lifetime Average Dairy Dose)で、接触したメディアと接触率と接触物の量と暴露期間をかけ、これを体重と生存期間で割って求められています。また、q*はTEQsで0.156(ng/kg-day)です。

 ちょっと難しいけれども、ともかく、アメリカ人は、一日に20m3の空気を吸入し、0.2gの土壌を5歳まで摂食し、野菜は種実類や豆などを除いて104g食べ、牛乳を300g、牛肉を77g食べている。それで、計算するとダイオキシンを、おおまかにいって次のような経路で摂取していることになるようです。

暴露経路
(Exposure Media)
ダイオキシン濃度
対策前(1982~1994)
ダイオキシン濃度
対策後(1994~1996)
空気
(Air,pg/m3)
0.110.03
非耕作地の土壌
(soil,untilled,ng/kg)
3.97.6
耕作地の土壌
(soil,tilled,ng/kg)
0.20.4
野菜
(vegetables,ng/kg)生fresh
0.040.01
牛肉
(beef,ng/kg)
4.711.42
牛乳
(milk,ng/L)
0.640.19
母乳
(mother's milk,ng/kg fat)
10531
 

 土壌は、環境庁の「主要パラメーター文献値」(調査中)によるとダイオキシンの半減期が、1〜3年といわれることもあるし、10年以上かかるともいわれています。上の表でも、土壌に関しては、対策前より数値が上がっており、簡単には分解されず、地面の深い部分のダイオキシンが再度地表に出てくるようなことが起こるようです。
 それだけ、ダイオキシンは発生させ、蓄積させてしまうと、土壌中で滞留し、悪い状態が続くということでしょう。

 今日(2.10.1999)厚生省は、所沢のJAが発表した資料に関連し、「97年度調査による日本人の体重1kgあたりのダイオキシンの一日摂取量は2.41pgTEQ/kg だったので、所沢産のホウレンソウだけ(一日カロリー所要量分だけ?)食べても大丈夫」といいました。
 野菜(脂肪分の少ない根菜や葉もの)の影響は確かに上の数値を見ても少ないので、心配はないと思われます。

 ただ、現在の所沢が穀類や豆類や牧草などの飼料を作ったり、肉牛や牛乳の生産に適した場所であるかは、今後の調査の結果(環境疔、農林水産省、厚生省、埼玉県がそれぞれ調査中)を見なければならないかもしれません。


関連URL:
Risk assessment suport to the development of technical standards for emissions from combustion units burning hazardous wastes(PDF書類) EPA
「A SCREENING LEVEL RISK ASSESMENT OF THE INDIRECT IMPACTS FROM THE COLUMBUS WASTE TO ENERGY FACILITY IN COLUMBUS OHIO」(PDF書類) EPA
土壌中ダイオキシン類に関する検討会について 環境庁
「ダイオキシン類による土壌汚染対策事例海外調査の概要」(PDF書類) 環境庁

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