1997年9月18日付けのThe New England Journal of Medicine に「A Short-Term Trial of Tacrolimus Ointment for Atopic Dermatitis」という記事が掲載されました。このインターネット版医学雑誌によると、アトピー性皮膚炎の治療薬として、タクロリムスという軟膏剤が注目されています。
上の記事は、ドイツを中心としたヨーロッパの研究チームが、アトピー性皮膚炎の症状をもつ患者に、タクロリムス軟膏剤の臨床テストをしたリポートです。このタクロリムス(FK506)は、アトピー性皮膚炎の治療に、ステロイドなどの副作用もなく大変有効な薬であるという、アレルギーの症状をもつ本人やその家族には大変嬉しいニュースだと思います。
タクロリムス軟膏剤とはどのような薬なのでしょうか。
infoseekなどの検索エンジンで、Tacrolimus,FK506,ointment(軟膏剤),atopyのキーワードで探したところ、ピッツバーグ大学のメディカルセンターとつながりました。
驚いたことに、ここの大学の教授 Thomas E. Starzl, M.D., Ph.D. がこの薬を開発に携わった人物でありました。
その名もStarzlというタイトルの、E.Starzl, M.D.を称える文章では、タクロリムスが次のように紹介されています。
「この薬は、臓器移植のさいに拒否反応を防ぐ免疫抑制剤としてステロイドやシクロスポリン(cyclosporine)などとともに使用されています。1986年にE.Starzlと彼の研究グループは、Tacrolimusの開発に取りかかりました。はじめて臓器移植の患者に用いられたと発表されたのが1989年、そしてFDA(the U.S. Food and Drug Administration)により正式に認可されたのが1994年です」から、文字通り新薬といってよいものでしょう。
文頭のThe New England Journal of Medicineの記事は、この新しい薬をアトピー性皮膚炎の治療に使えないかと、世界各国の皮膚科の先生が臨床試験しているレポートでもあったわけです。
この薬は、日本の藤沢薬品工業のアメリカ法人が開発しているそうで、そちらのサイトには Tacrolimus についての詳しい情報が掲載されています。
また、厚生省長期慢性疾患総合研究事業「アレルギー総合研究」研究報告平成8年版に、「アトピー性皮膚炎の治療に関する研究」玉置 邦彦 東京大学医学部付属病院院長 が研究報告されています。
玉置邦彦先生は、「ステロイド外用剤のような副作用がなく、しかも効果のある薬として移植免疫抑制薬外用剤の開発が進められているが、その中でも FK506軟膏 は期待されている。すでにその効果についてはいくつかの臨床試験により確認されている」と記述されています。
つまり、日本でもすでに臨床試験がなされていて、まもなく発売されるようです。
臨床試験については、平成7年7月に名古屋で開催された日本皮膚アレルギー学会で発表されたタクロリムス軟膏剤の FK506 軟膏のアトピー性皮膚炎に対する後期第二相濃度設定試験-多施設共同試験-が私たちにとって大変ありがたいデータだと思います。
副作用としては、@血中濃度の上昇や A感染症の併発などが上げられていますが、「これらの問題を念頭におきつつ使用すれば移植免疫抑制剤の外用剤はアトピー性皮膚炎の治療にこれから大きな役割を果たすものと考えられる」と玉置先生はおっしゃっています。