骨強化とビタミンD
   京都府立医科大学助教授  吉川敏一先生

 ビタミンDには、”カルシウムの吸収を高める””骨の新陳代謝を活性化する”などの働きがあります。
骨を強くするためには、骨の材料となるカルシウムを十分摂取すると共に、ビタミンDも欠かさずとることが大切です。
骨を強くするビタミンD
欠乏すると骨がもろくなり骨粗鬆症を招くことも

 昨今は、転んだ拍子に手をついただけで骨折する子どもが多いという話をよく聞きます。また中高年の女性では、「骨粗鬆症」になる人が多いようです。骨粗鬆症(こつそしょうしょう)とは、骨の組織の密度が低下して、骨に鬆(す)が入ったようになり、骨折しやすくなる状態をいいます。最近、この骨粗鬆症になる人が増えていることから、骨を強く保つことへの関心が高まっています。
 骨を強くするためには、カルシウムを十分にとることが大切です。カルシウムは、骨の原材科になるものですから、丈大な骨をつくるには、カルシウムは、必要不可欠です。
 ただ骨の強化には、カルシウムだけでなく、「ビタミンD」も欠かせません。ビタミンDには、カルシウムの吸収を助ける働きがあり、また、骨がつくられる過程で、大きな役割を担っているのです。
 ビタミンDがなければ、せっかく食べ物からとったカルシウムも、その多くは体外に排泄されてしまいますし、吸収されたカルシウムも、骨の材料としての役割を十分果たすことができません。
 そのため、ビタミンDが欠乏すると、骨や関節に障害が起こりやすくなります。具体的には、「骨や関節が弱くなる、腰が痛む、だるさを感じる」などの症状が現われるようになります。また、中高年では、骨粗鬆症になり、骨折しやすくなるなどの傾向も出てきます。


 ビタミンDの働き
 カルシウムの吸収率を高め骨の生成を助ける

 体内のビタミンDには、1.食べ物から取り込まれるものと、2.紫外線のもつエネルギーによって、体内でつくられるものとがあります。

  1. 食ぺ物から取り込まれるビタミンD  食品から体内に取り込まれたビタミンDは、そのままの形では働くことかてきません。消化器(小腸)で吸収された後、肝臓や腎臓に送られ、活性化されて初めて体内で有効なものになるのです。
  2. 紫外線によって生成されるビタミンD  皮膚の組織中には、脂肪が代謝されることによって産生される、〃プロビタミンD〃といわれるビタミンDの前駆体物質が存在します。これが紫外線に当たると、分解されてビタミンDに変わるのです。

ビタミンDは、体内で次のような働きをします。
◇カルシウムの吸収率を高める
 骨の材料になるカルシウムは、小腸での吸収率が非常に悪く、カルシウムだけ摂取した場合は、その70〜80%が体外に排泄されてしまいます。
 ビタミンDは、カルシウムが小腸の細胞膜に取り込まれやすくなるように働くことで、カルシウムの吸収率を高めます。
 ビタミンDを毎日、1000IU(IUは国際単位)投与した人は、ビタミンDを投与しなかった人に比べ、カルシウムの吸収率が2倍近くも上がっています。お年寄りは若い人ほど吸収率は上がりませんが、それでも1.5倍ほど上昇しています。
 効率よくカルシウムを取り入れるために、ビタミンDは欠かせないといえます。
◇骨の新陳代謝を活性化する
 骨は一度つくられると一生変わらないように思えますが、実際には、絶えず破壊と再生を繰り返しています。それによって、しなやかで丈夫な骨を保っているのです。骨の生まれ変わりに、中心的役割を担っているのが、「破骨細胞」です。この細胞は、もともと血液中にあり、必要に応じて骨の周りに集まってきます。
 破骨細胞はその名のとおり、古くなった骨を壊すのが役目です。古い骨が壊されると、その跡に骨芽細胞が集まってきて、カルシウムを沈着させ、新しく丈夫な骨を再生していきます。
 ビタミンDは、骨の新陳代謝の過程で、破壊と再生が行われるよう調整する役割を果たしています。
 ビタミンDが不足すると、破骨細胞と骨芽細胞のバランスがくずれ、骨の破壊に再生が追いつかなくなってしまいます。その結果、骨がどんどんもろくなり、骨粗鬆症を引き起こすのです。
 このようにビタミンDは、骨の健康維持に必要不可欠なものですから、食生活などで不足しないようにしたいものです。

 ビタミンDを上手にとる
ビタミンDは青背の魚などに多く含まれる

 ビタミンDが多く含まれているのは、うなぎやかつお、いわし、にしんなどの、青背の魚です。また卵の黄身などにも、たくさん含まれています。
 1日にとるべきビタミンDの最低所要量は、100IU程度です。
 およその目安としては、かつおの刺身l切れ、うな重のうなぎなら一切れ、いわしおよそl/3匹程度です。

 各々1品だけで、1日に必要なビタミンDを満たすことができますから、ごく普通の食生活をしている限りは、不足することはないといえるでしょう。
 ただし、骨の健康を保つためには、カルシウムやビタミンDのほかにも、ビタミンK、マグネシウムなどのさまざまな栄養素が必要になります。栄養が偏らないよう、多様な食品をバランスよくとることも大切です。
 一方、ビタミンDは、油に溶ける脂溶性のビタミンなので、過剰にとると体内の脂肪に蓄積され、過剰症を引き起こすことがあります。
 ビタミンDが過剰になると、かえって骨からカルシウムが抜け出し、骨粗鬆症の原因となります。しかしこれは、ビタミンD剤を大量に、しかも長期間服用した場合に限られます。日常の食べ物からとる程度ならば、まず問題ありません。
 前述したように、食べ物から吸収されたビタミンDの活性化は、肝臓と腎臓で行われます。そのため、肝臓や腎臓の悪い人、特に腎臓障害で透析療法をしている人は、食べ物からビタミンDをいくらとっても、活性化させることができません。そのため、あらかじめ活性化させたビタミンDを処方してもらう必要があります。このように、肝臓や腎臓の障害のある人や、骨粗鬆症の治療を行っている人は、過剰症を引き起こさないためにも、医師の指示に従って、ビタミン剤を服用することが大切です。


 ビタミンDを上手にとる2
日光を浴びることによってでビタミンDが生成される

 ところで、ビタミンDをとるには、食べ物から摂取するだけでなく、日光を浴びて体内で生成させるという方法もあります。
 では、1日にとりたいビタミンD100IUは、どの程度の時間、紫外線を浴ぴれば、生成されるのでしょうか。夏の晴れた日に日光を浴ぴた場合で約6分、また、冬の曇った日でも約30分の日光を浴びれば生成されます。
 夏であれば、通勤・通学の際に外を歩けば十分生成されますし、冬でも少し意識して散歩などをすれば、必要なビタミンDを生成できます。
 しかし、最近では、紫外線カットの化粧品を使っている人も多く、また、受験勉強などであまり外出しない人、夜間勤務にあたっている人、あるいは病気やけがで外に出られない人など、日光を浴びるチヤンスが少ない人もいます。
 このような人は特に、意識して食事からビタミンDをとる必要があります。
 一方、骨を強くするには、カルシウムやビタミンなどの栄養のほか、適度に運動することも必要です。
 最近の子どもは骨がもろいといわれるのには、運動不足も影響していると思われます。骨を強くするためには、バランスのとれた食事に注意するとともに、適度な運動を心がけることも大切です。
ビタミンDを多く含む食品
参考資料:「NHKきょうの健康」1996年5月号 日本放送出版会 


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