続・食品の安全性

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続・食品の安全性

 5月15日朝刊は、日本即席食品工業協会による全面広告「カップめんなどの容器は、環境ホルモンなどを出しません」を掲載しました。
 最近、新聞やテレビなどのマスコミで、「カップめんの容器から、環境ホルモンの溶出を確認」などの報道が相次ぎ、消費者に不安を与えている問題で、これに対して答えた感じの意見広告です。
 インターネットでも15日より、同協会のホームページからこれらに関する情報が提供されています。

   プラスチックについては、プラスチックと環境ホルモンにまつわる「関心の高さ」に比べて、「情報のあいまいさ」や「情報の極端な少なさ」が不安を増長しているのではないでしょうか。そして、マスコミ、行政、業界団体が出す意見は、それぞれに大きなギャップをもったままです。

 カップめんでは、マスコミは特殊な条件下でのスチレン溶出をとらえて、「男性の精子数が減っている」に関連づけ、センセーショナルに扱い、業界団体は「スチレンは溶出しないと実験で確認された」と、正反対のことを言っています。
 どちらにしても、「信じにくい」状況ではないでしょうか。

 食品衛生研究(Vol.48)で、鬼武一夫(日本生活協同組合連合会安全政策推進室)氏は、「化学物質の安全性レベルとその評価・規制・感覚」の関係を分析しています。その記事(食品添加物や農薬がテーマ)によると、「化学物質の有害性を主張するのはやさしいが、安全性を証明するのは現在の科学でもまだ困難です」といい、「消費者が求めるような『安全か』、『有害か』といった二者択一的な結論を導くのは苦手」であるようです。
 また、行政の立場は「灰色」という評価はなじまず、「許可するか、禁止するかの二者択一になる」ので、環境ホルモンのような「灰色」に該当する化学物質の多くは、「おそらく問題がないであろう」とか「当面、問題となるとは考えられない」など、煮え切らない答えになります。

 そして鬼武氏は、不安の種類として、「誤解にもとづく不安」と「科学的に灰色と評価せざるを得ない化学物質が使用されていることに対する不安」に整理し、前者には「消費者自身が科学的知識や判断力の向上に努める」こと、そして「メーカーや行政が適切な情報提供に努める」こと。また、後者には、科学的なものさしがまだ正確でないので解決法が見いだせないが、「消費者とメーカーと行政の信頼関係の再構築」が重要と指摘しています。

 こうした面から言うと、今回の日本即席食品工業協会の発表は、1998.4月に民間研究機関(東レリサーチセンター)で実験を行ったということで、消費者にとって期待が持てるものではないでしょうか。(その詳細はまだ公表されていません)

 「カップめんの容器」の原料ポリスチレンについては、国際的にも評価が揺れているようです。
 OECDの文書 Endocrine-disrupting substances into the environment:What should be done? 1998.1には、Polystyrene(ポリスチレン)ということばが、4回出てきますが、「MCF-7(ヒト乳がん)細胞を用い、その増殖能を指標に、エストロゲン性を調べた試験において、スチレンモノマーはエストロゲン性はないと評価された(A Soto et al;Environmental Health Perspectives,113-122,103,7,1995」というものや、「雌のラットにポリスチレン(plystyrene)基原の物質を大量に与えた場合の実験結果(A Soto et al;P-Nonyl-Phenol:An estrogenic xenobiotic released form "modified"polystyrene,Environment Health Perspective,167-173(1991)です。

 また、同記事には、Table2-PRIORITY SUBSTANCES AND CATEGORIES OF SUBSTANCES FOR WHICH ENDOCRINE-DISRUPTIONG CHARACTERISTICS HAVE BEEN REPORTEDで、内分泌かく乱があるとリポートされた物質やカテゴリーの優先順位が作成されています。
 それによると、DDTなどの塩素系農薬PCBダイオキシンその他の農薬、ノニルフェノールやアルキフェノールなどの界面活性剤ステロイドビスフェノールAフサレートなどのその他の化学物質という順序付けになっています。
 しかし、この順序付けは、あくまでも予備的なリストであり、いまのところたたき台的な色彩が濃いものということです。

 また、アメリカEPAにも化学物質調査[the Endocrine Disruptor Screening and Testing Advisory Committee (EDSTAC)]の優先順位がありますが、これは発展途上であり不十分であるので、現在(1998.5)引用や出版などが禁止されています。


欄外

主なプラスチック(樹脂)の種類と生産量
(平成7年集計)
樹脂名
原料名
主な用途
生産量(トン)

ポリエチレンフタレート

エチレン

フィルム・カセットテープ・ペットボトル

61万

高密度ポリエチレン

エチレンなど

灯油缶・ボトル・家庭用品

124万

ポリ塩化ビニール(PCV)

エチレン
フタル酸エステル

食品ラップ・農業用フィルム・卵パック

227万

低密度ポリエチレン

エチレン

ポリ袋・電気通信ケーブル被覆

195万

ポリプロピレン

プロピレン

浴槽・浴用品・水筒・包装材料

250万

ポリスチレン

スチレン

トレイ・電気部品・発泡スチロール

148万

ABS樹脂

スチレン

玩具・電化製品キャピネット

54万

AS樹脂

---

ボールペン・容器の透明蓋

---万

石油樹脂

---

コート剤・塗料・インキ

---万

ポリビニルアルコール(PBA)

カセイソーダなど

食品ラップ・繊維

---万

メタアクリル樹脂

----

看板・鑑賞魚水槽

---万

ポリカーボネート

ビスフェノールA

ほ乳びん・学校給食用食器

---万

ポリアミド(ナイロン)

----

漁網・ロープ・ほ乳びん

---万

フェノール樹脂

フェノール

プリント配線基板・機械部品・接着剤

---万

ユリア樹脂

尿素とホルマリン

ボタン・キャップ・合板接着剤

---万

メラミン樹脂

メラミン

食器・家庭用品・配線器具

---万

不飽和ポリエステル樹脂

ペット樹脂

繊維強化プラスチック・浴槽・ヨット

---万

ポリウレタンフォーム

イソシアネート

充填剤・スポンジ

---万

エポキシ樹脂

ビスフェノールA

接着剤・塗料・プリント基板

---万

合計

1403万

資料:東京リサイクルハンドブック1997.3(東京都清掃局)
生産量資料:日本プラスチック工業連盟
資料:プラスチックの実際知識(東洋経済新報社)


用語解説
MCF-7 ヒト乳がん細胞。細胞レベルの実験で、これに化学物質を与え、そのエストロゲン受容体との親和性を調べる。
参考資料:
「食品衛生研究」Vol.48
「東京リサイクルハンドブック」東京都清掃局
「プラスチックの実際知識」(東洋経済新報社)
関連URL:
日本即席食品工業協会 
List of OECD Chemical Test Guidelines 経済協力開発機構
What's New with the Endocrine Disruptor Screening and Testing Advisory Committee (EDSTAC)?  アメリカ環境保護局
食品衛生調査会毒性・器具容器包装合同部会議事次第 厚生労働省

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